待って ウサギさん。
あなたはこれからドコへ行くの?
私も連れて行って下さい。

不思議な不思議な
あなたの向かう世界へと。











「なんでアリスはウサギなんか追いかけたのかしら」

妙な疑問を抱きながら、私は読んでいた本をパタンと閉じた。 柾輝はそんな私をチラッと見たあと、 すぐにまた自分の読んでいた雑誌に視線を落とした。
…無視かよ。

「おいッ!」
「いだっ」

向かいに座る柾輝の足を思いっ切り蹴り飛ばした。ほら、こたつの中って言わば戦場じゃん?

「蹴んなよ…」

柾輝は眉間にシワを寄せて雑誌から顔をあげた。あからさまに苦労人って顔しやがって。

「柾輝が無視するから」

私が言うと柾輝はため息をついて雑誌を閉じた。 雑誌って言ってもファッション雑誌とか、そんな洒落たもんじゃない。 技とかフォーメーションとか、そんなことが書いてあるようなサッカー雑誌。 こいつってやっぱサッカー馬鹿だよなあ。

「で、なんだよ?」
「だから、なんでウサギを追いかけたかって話!」

私が真剣に聞くと、柾輝はくだらねーって顔しながら「追いかけねえと話始まんねーだろ」と。 可愛さのカケラも無い回答をよこした。 こいつは本当に同い年の中学2年生なのだろうか。 子ども特有のピュアな回答は?ユーモアに溢れた考えは?

「物語なんてそんなもんだろ」

…大人にはなりたくないものだ。 私はそんな思いを込めて柾輝を見つめる。 柾輝は私の視線を気にもせず、こたつから出てキッチンへと向かった。

「げ、コーヒーねぇし」

棚の扉を開けた柾輝が呟いて一人ため息をつく。 幸せが逃げるって言葉知らないのかしら。

「梨香、オレちょっとコンビニ行ってくるわ」

柾輝はリビングのイスにかけてあったジャケットを羽織り、早々と部屋を出て行った。

「あ、ちょっと待って!」

私が慌てて呼ぶと柾輝が振り替えった。
どうした?という顔をしてこちらを見る。


「あたしも行く!」







ああ、何となくわかったよ、アリス。
あんたはウサギに恋をしてたんだ。
少しでも一緒にいたかったんだよね。

私的な考えだけれど。



あながち間違ってはいないでしょう?








−−− アトガキ −−−−−−−−−−−

アリス観たいなぁ。

2007.1.21   壬弥楜