人生って予測出来ないんだよ。
だから、突然の出来事に凄くびっくりする。






気になる
    不可解な行動








席替えをしてから早2ヶ月。私は今の席をかなり気に入っている。
窓側で景色は最高。一番後ろの席だから寝ていてもあんまりバレることはない。 そして何より、前の席の人が黒川くんだということ。だって私は黒川くんが好きだから。 友達に言ったら凄い否定されたけど。 黒川くんは普通に授業サボったり煙草吸ったりするから、周りの人はみんな怖がってるみたい。 私にはみんなが言うほど怖い人には見えないけどなー。
私は珍しく授業に出ている黒川くんの背中をじっと見つめた。 なんか男の人の背中って感じ。どことなくクラスの男子とは違う雰囲気で、 中学生にしては大人びている。 …そうなるとやっぱ大人っぽい綺麗な女の人が好きなのかな? だったら困る。私よく子どもっぽいって言われるし。



心臓が止まるかと思った。 ぼーっとしてて気づかなかったけど、いつの間にか黒川くんはこっちを向いていて。 彼の顔が私の目の前にあった。こんなに間近で人の顔を見たのは初めてかも。 日に焼けた小麦色の肌に、少し釣り目がちの目。 ……うん、やっぱ黒川くんて怖いっていうよりかっこいいんだよね。

「なに見てんだよ」
「え?」
「こっちずっと見てただろ?」

うわ、普通に気づかれてた。 黒川くんて結構めざといんだ。それとも私が見すぎてた? …それも充分にありえる。

「おい質問に答えろ」
「え?あー…うん、見てた」

あっさりと素直に認めてしまった。黒川くんはどう思ったかな?変人だと思われたかも。 だったら嫌だなー…好きな人からの自分の印象が変人だなんてあんまりじゃない。 あーあ、自分の馬鹿。

「そんなに俺が気になる?」
「…うんって言ったら、どうする?」

「…こーする」

黒川くんがそう言った瞬間、私の視界は狭くなって唇がふさがった。
教室中がざわめく。
突然の出来事に、不出来な私の頭はついて来れていない。
しばらくして唇が離れ、視界も元の広さに戻った。 ざわめくクラスメイトの声とか、怒鳴るキューピーの声とか。 授業の終わりを告げるチャイムの音とか。 そんなものは全部私の耳には入ってこない。 ただただ、耳元でささやかれた黒川くんの「ごちそーさん」と言った声が頭の中に響いた。 唖然とする私の目には不適に笑う黒川くんが映っていて。 ファーストキスが奪われたとか、そういうことを考える前に、 やっぱり黒川くんてかっこいいなって思った私は、やっぱり変なのかな。




放課後、私と黒川くんはキューピーに呼び出された。 でも、ツバをとばしながら真っ赤になって怒り狂うキューピーの話なんか頭に入らない。 だって私は、隣りにいる黒川くんが気になってしょうがなかったから。


「失礼しました」

1時間くらいのお説教が終わって、私と黒川くんは一緒に職員室をあとにした。
教室へ戻る廊下、私の前を歩く黒川くんに思い切って話しかけてみた。

「なんでキスしたの?」

そう聞いたら「さぁな」とかいう曖昧な言葉しか返ってこなかった。



私はただからかわれているだけなのか。

それとも…期待しちゃってもいいの?








−−− アトガキ −−−−−−−−−−−

サッカー部が出来る前のお話。

2006.12.17   壬弥楜