テスト期間ということで部活も無し。
久々のオールオフの日曜日。
今日は自宅でしっかり勉強!

……するはずだったんだけど。






GAME-OVER






暖房の効いた六畳の部屋。 赤いテーブルの上には少しぬるくなったココアと、 無造作に広げてある参考書やルーズリーフ。 そして私の手はシャーペンや消しゴムではなく…
何故かプレステ2のコントローラーを握り締めている。

「くらえ、藤代誠二!」
「うりゃ!」
「なっ、カウンター!?」

次の瞬間。
テレビ画面には1P-WINの文字が大々的に表示された。

「うわ、負けたー」

喚きながらコントローラーをベッドの方へ放り投げる。

「てゆーか、今日は勉強しようと思ってたのに」

藤代は武蔵森の生徒で私とは違う学校に通っている。 武蔵森のテストは私の学校の一週間後。 だから藤代にはまだまだ充分に時間がある。 だけど私は違う。テストは明日。 ゲームをしてる暇など少しもない。

「でも結局いつもしないで終わるんっしょ?」
「……少しはするわよ」

そう言ってぬるいココアを一口飲んだ。口の中に甘さが広がる。 熱くも冷たくもないココアは、中途半端な味がした。

「じゃぁ、勉強の邪魔にならないようにそろそろ…」
「え、勝ち逃げ?卑怯者ー」
「卑怯!?」
「もう1ゲーム!」




****

月曜日。 みんな手には重そうな参考書とか持ってる。 椅子に座って、教科書と睨めっこしてる奴もいる。 そんな中、私は机に突っ伏していた。 昨日、ずっと藤代とゲームにはまってしまって…全く勉強していない。 だから今更勉強したって悪足掻きもいいところ。 だったら…ぶっつけ本番で勝負してやるわ! あ…あ、当たって砕けろ!(投げやり)



後日、テストの結果が返された。本当に私は当たって砕けた(ぐすん) 結果はズタボロ。親にはとてもじゃないけど見せられない点数だ。


学校帰り、私は通学路ではない坂道を重い足取りで歩いていた。 坂の頂上にくると目の前に大きな古ぼけた建物がある。 その建物の中に入り階段を上った。 6階まで来たときポケットが震えた。 ダッフルのポケットから黒い携帯を取り出して、 通話ボタンを押すと忌々しい奴の声が聞こえてきた。

『テストどうだったー?』

藤代だ。

「もう最悪だったわよ」
『あはは、俺は今先輩ともう勉強中!』
「ふーん、どこで?もしかして……ここでかしら?」
『え…え!?』

ブツッ
ツ―ツ――

何も言わず電話を切られた。 するとすぐにバタバタと騒がしい足音が聞こえて、目の前のドアが勢いよく開いた。

!?」
「やほ!藤代君は明日テストかなぁ?」
「え、あ…」
「ふーん、じゃぁ、ゲームしよっか!」


私がニヤリと笑ってやると、藤代は苦い笑いを浮かべた。

「おっじゃまっしまーす」




結局、藤代は理科の点数がボロボロだったらしい。
もちろん、巻き添えをくらった藤代の先輩方も。









−−− アトガキ −−−−−−−−−−−

藤代わかんない…

2006.12.2     壬弥楜