真夏。
生暖かい風が教室の窓からふわりと吹きぬける。
私は頬杖ついて窓の外を眺めていた。
暑い上に湿気も高く、気分は最悪だ。




after all...




誰もいない教室はなんとも空しい。 そんな寂しい空間に一人、ムスッとしながらグラウンドにあるサッカーゴールを睨んだ。
気分はかなりブルーだ。 「部活と私どっちが大切?」なんて。 お決まりの台詞を言ったら、あいつはどんな顔するだろう。 もっとも、そんなこと言える訳ないが。 サッカーはあいつの夢だ。 頑張っているあいつの足を引っ張るような真似はしたくない。
だけど…… 楽しみにしていた久々のデートを、突然の部活で中止にされた身にもなってみろ! それも一度や二度ならともかく毎度毎度…
もう誠二なんて大嫌い!!

苛々しつつ、昼に購買で買った紙パックのいちご・オレを一口飲む。

「う…」

ぬるくなったそれは凄まじく不味かった。 りんごジュースとかならまだ飲めたかもね…。 そう思いながらもパックの中身を無理に喉に流した。 具合悪くなりそ……

「とりゃ」

パコンとマヌケな音。 空の紙パックは綺麗に弧を描いてゴミ箱に入った。

「……すっげー腹立つ」

もっと私のこと大切にしろっつーの!

「もーっ!暑い!」

苛々する上に暇だと、更に暑く感じるのは気のせいだろうか。 うちわを手に取り、パタパタさせると微風が髪をなびかせた。
再び視線をグラウンドの方に向けると、ちょうどあいつがシュートを決めたところだった。 エースストライカーなだけはありますこと。 綺麗にシュートを決めた。



ふと、誠二と目が合った。

せんぱーい!見てましたー?」

部活中にも関わらず、誠二はこっちを見て手を振っている。

「……見逃した。」

ちょっと無愛想に応えた。

「まじっすか!?」


誠二の彼女とかやってると、嫉妬もされるし、全くデートする時間ないし、 本当、苛々することもあるけど…


先輩のあほー!ちゃんと見てて下さいよー!」


この馬鹿見てると、 そんなのどーでもよくなって、 なんか元気になったり、ちょっと幸せな気分になったりするから、良しとする。


「馬鹿せーじ!もう一回シュート決めて見せろー!」


あどけない笑顔とか、
暑さも忘れてボールを追いかけてるトコとか、


「りょーかいっ!」


やっぱり、好きなんだと思う。






−−− アトガキ −−−−−−−−−−−

クリスマスも近いと言うのに真夏ネタ。

2006.12.3     壬弥楜